慢性腰痛・首の痛み-リハビリから漢方・ボトックスまで
背骨の構造
人間の背骨は椎体と呼ばれる円柱形の骨が、椎間板という軟骨の板でつながった構造をしています(図A)。
椎間板には常に圧力が加わっており、後方へ飛び出して神経を圧迫することがあります。これが椎間板ヘルニアです(図B)。
また老化によって椎体は変形し、椎間板は幅が狭くなります。この状態が変形性脊椎症で、放っておくと猫背になってゆきます(図C)。
腰痛や首の痛みはこうした骨格を支える筋肉の痛みが主体ですので、脊柱の筋肉をどのようにケアするかが重要になってきます。
リハビリテーションと薬物治療
筋肉のケアには筋肉を引き伸ばすストレッチと、筋肉の収縮力を増加させる筋力訓練とがあります。これらを組み合わせて、患者様本人に不足した筋肉の伸縮性と筋力を補うのがリハビリテーションの役割です。
しかしリハビリは時間がかかりますので、痛みを早く治したい場合は炎症止めや痛み止めの内服薬を服用したり、湿布で局所に抗炎症剤を吸収させる治療が行われます。
こうした薬物治療でも治らない腰痛や首の痛みには漢方トリガーポイント注射を行い、それでも疼痛がくり返される頑固な疼痛にはボトックス注射(ボツリヌス注射)という方法があります。
漢方トリガーポイント注射
トリガーポイントとは、圧迫などの刺激で鋭い痛みを生じる、筋肉内の硬結(しこり)のことです。ここに麻酔薬を注射するのが、トリガーポイント注射です。
漢方トリガーポイント注射は、トリガーポイントと同時に鍼灸のツボに注射を行うものです。
酒井院長は麻酔科医時代に、上海医学院に留学して鍼麻酔を学んだ医師から鍼麻酔を学び、国内の病院で鍼灸外来を担当した経験があります。
その後アメリカ留学時代に、カナダのChit Chan Gunn教授が鍼灸のペインクリニックへの応用を提唱していることを知り、帰国後漢方トリガーポイント注射を始めて好評を博しました。
漢方トリガーポイント注射は、トリガーポイント注射の一時的な除痛効果を、より長時間持続させることが可能です。頑固な腰痛、首や肩の痛みなどに大きな威力を発揮します。
ボトックス注射-究極の腰痛・首の痛み治療
漢方トリガーポイント注射でも腰痛や首の痛み、肩こりがくり返される場合は、長期間筋肉の緊張を取るボトックス注射(ボツリヌス注射)が薦められます。
ボツリヌス注射は顔のシワを減らす目的で美容外科や美容皮膚科で広く行われていますが、最近は慢性の腰痛や肩こりに長期間有効であることが報告されています。
当院では、「意識しないのに勝手に手指が動く」局所性ジストニアの患者様にボツリヌス注射を行ってきました。このボツリヌス注射を究極の腰痛・肩凝り治療として応用しています。
ボツリヌス製剤には最近韓国製や中国製が登場していますが、当院では世界で初めてボツリヌス製剤を開発したアラガン社製のボトックス・ビスタを使用しています。