eスポーツ外来-パソコン操作による痛みの治療
eスポーツと健康障害
eスポーツはelectronic sportsの略称で、コンピューターやスマートフォンなどの電子機器を使って行うオンラインゲームが、スポーツ競技となったものです。
最初のeスポーツ大会は1972年にアメリカのスタンフォード大学で開催されました。
その後電子機器およびインターネットの発達と、ゲームソフト開発によってオンラインゲームが爆発的に広がり、eスポーツも世界規模の大会が開かれるようになりました。現在ではプロのゲーマがチームを形成しており、国際的な競技団体もできています。
2021年には東京オリンピック公式プレイベントとして、Olympic Virtual Series (OVS)というeスポーツ競技会が開催されました。オンラインゲームが国際オリンピック委員会(IOC)でもスポーツ競技として認知されつつあるのです。
eスポーツ選手はゲームで心身を酷使するために、特有の健康障害が生じます。この症状は日常生活や職場におけるコンピューター操作による障害に共通したものです。
コンピューター操作による手の痛み・肩こり
当院の院長は工学研究科教授として人体とコンピューターのかかわりを研究してきたスペシャリストであり、パソコンの使い過ぎによる頸肩腕症候群、四十肩、腱鞘炎など首から手先までの痛みの治療を行っています。
診療内容は整形外科・リハビリテーション治療のほか、特に首や肩の痛みが著しかったり長期にわたる場合は、漢方トリガーポイント注射やボツリヌス注射など、独自の方法で高い治療効果をあげています。
1)腱鞘炎
パソコンのキーボード操作は、手のひらを下に向けて両手の指でひとつひとつのキーボードを叩いてゆく点で、ピアノを弾く動作と似ています。ピアニストの手の痛みの原因で多いのが腱鞘炎です。ピアニストの手の障害についてはこちらをご覧ください。
腱鞘は腱が浮かび上がるのを防ぐ作用があり(図1)、腱鞘内で腱と腱鞘が擦れあって痛みを起こすのが腱鞘炎です。腱鞘炎の原因は腱鞘が狭くなるとともに、腱が腫れて太くなることがわかっています。腱鞘炎の手術は腱鞘を切り開くだけですが、これでは腱鞘の存在が無意味になってしまうため、リハビリや外用薬・内服薬・注射等、手術をしない治療が望ましいところです。
最近はスマートフォンのフリック動作で親指の腱鞘炎を起こす人が増えています。詳細はスマートフォンによる親指の障害を参照してください。
2)手根管症候群
手根管は手首の手のひら側にあり、屈筋腱とともに正中神経という太い神経が入っています。手根管内の腱が腫れると正中神経が圧迫され、手のしびれや知覚障害、親指の筋力低下などが起こります。
パソコンのキーボード操作では手首を上に反らす(背屈する)動作が多く、これにより手根管内圧が上昇すると正中神経を圧迫し、手根管症候群を起こすとされています。
詳細は手根管症候群を参照してください。
3)頸肩腕症候群
タイプライターやコンピューター等の作業による肩こりや首の痛みで、椎間板ヘルニアや頚椎症などの原因が明確でないものを総称して頸肩腕症候群と呼びます。
コンピューター作業による首の痛みにはいわゆるストレートネックがかかわることが多いです。パソコン画面に集中するあまり頭が前方に移動すると、頸椎は本来の湾曲を失ってまっすぐになり、首の後ろの筋肉が緊張して肩こりや痛みの原因になります。
詳細は頚肩腕症候群を参照してください。