院長
音楽家のからだの障害(2)なぜ音楽家医学が必要とされるか
音楽家を対象とした音楽家医学がなぜ必要とされるのでしょうか。
音楽家は楽器演奏において極めて特殊な身体運動を強いられ、その結果通常の人々では考えられない軽い症状でも演奏に重大な支障を生じます。腱鞘炎で手が痛んでも、日常生活なら痛む動作を控えるか、痛まないほうの手で代用するなどの工夫で済みますが、美しい音楽を奏でる場合はそうはゆきません。
音楽家の健康障害には、関節リウマチや骨折など特定の疾患の症状で演奏が困難になる場合と、楽器の弾きすぎによる障害(オーバーユース障害)とがあります。
オーバーユース障害は楽器の弾きすぎで痛くなったのですから、弾くのを休めば痛みはなくなるでしょう。音楽家の方々の話では、実際病院にかかるとそういわれることが多いらしいですが、休んで痛みが治っても演奏を再開して再び痛んだのでは解決にならず、休んだブランクを取り戻さなければなりません。
このため、音楽家の立場に立った医学が必要になるのです。ここでいう音楽家とは、プロだけでなくアマチュアの方々も含みます。アマチュアであっても、趣味であっても、音楽演奏が困難になる苦しさ、悲しさはプロと変わらないはずです。
不幸というのは不思議なものだ。我々がそれについて話すと、だんだん不幸が激しくなる。
-ベートーヴェン